『箱の中の天国と地獄』読了

矢野龍王著、講談社NOVELS刊

施設と呼ばれる建物の中に閉じこめられた主人公達が、制限時間内に最上階の25階まで進まなければならないデスゲームに参加させられる。
各階には二つの箱が置かれてあり、どちらか一つでも開ければ上階への扉が開かれるのだが、箱の中には爆弾が仕込まれていることも……。
最初は六人で始まったこのゲームだが、階が進むにつれ一人、二人と脱落していく……、といった設定。

バトルロワイヤルを彷彿とさせる設定ではあるが、ミステリー調である(というかミステリーと銘打ってあるのだが)要素から、むしろクリムゾンの迷宮に雰囲気は近い。
いずれにせよ、殺し合いゲームの小説である。
さて、文体に関してだが、この手のジャンルの例に漏れず、かなりシンプルな文章で書かれている。
余計な修辞や描写をなくして、主人公の視点から見た状況と感情を直接的に表している。
文章力云々という問題もあるが、この分野ではこういった文体の方が得てして成功するものだ。
やはりスピード感と臨場感を出すには、少々拙いくらいの文章の方が良いらしい。
バトルロワイヤルを読んだ時にも感じたことである。
殺し合いゲームを題材にして文章がしっかり書けているのは、前述のクリムゾンの迷宮を書いた貴志祐介氏である。
ただ、貴志祐介氏の場合はスピード感・臨場感ではなく、状況分析からホラーの演出に持ち込むため、前二者とは根本的にスタイルが異なる。
まあ、シンプルであるが故にどんどんとページをめくれるのも事実で、読者を引き込む力はなかなかに大したものだと思った。
勢いで読める作品である。

さて、ここで作中で疑問に思った点を挙げたいが、未読の人にもネタバレにならないようにしているので読んでも問題はない。
尤も意味不明だろうけれど。
取り敢えず最大の疑問は、ストローの持ち主がオリジナルだとすると、表紙イラストを見る限り、入り込むことは無理なように思う。
そもそも、動機が本人の言っている事では弱いというか、動機として成り立つのかどうか、疑問である。
2ちゃんねる他、色々なサイトを回って解説を読んでみたのだが、上述の通りで間違いなさそうではあるのだが……。
こういった点と、一部(というか大半)の人物描写や張るだけ張った伏線の回収し忘れ(?)などをみるに、まだまだ設定や構成に難があることは否定しようがない。
この点、バトルロワイヤルはハシリであったにも関わらず、言いたいことは言い切っていたし、伏線も結構巧く使っていたように記憶している。
まあ取り敢えず、この辺りを改善していけばずっと良い作品となるのは間違いないだろう。
殺し合いという題材はともかくとして、ネットでの評価が否定から肯定まで幅広く別れている一因はまさにこれなのだ。
次回作を読むかどうかは分からないが、この点が改善されれば自ずと評価は上がるだろう。

……と、うだうだ書いてみたが、取り敢えず読んで損はない作品。
殺し合いにアレルギーのない人は是非、ご一読を。
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by clhaclha | 2006-12-04 23:59 | 読書感想・書評
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